山岳トンネル工事という過酷な現場に、知恵と力をあわせ持つ“現代の英雄”が挑みます。
支保工建込と吹付けを一体化した「ヘラクレス」は、省人化と自動化を進化させ、より安全で効率的な施工を実現するトンネル工事の革新機です。

山岳トンネル工事は、地形や地質の変化が激しく、常に予測不可能な現場です。
岩盤の硬さ、湧水、断層、狭い作業空間——人の力だけでは越えられない課題がいくつもあります。
そんな過酷な環境で、支保工の建込と吹付けという二つの工程を一台で行うのが「ヘラクレス」です。
その名はギリシャ神話の英雄・ヘラクレスに由来しています。
数々の試練を知恵と力で乗り越えた彼のように、現場の困難を打ち破る存在でありたいという願いが、この機械には込められています。
ヘラクレスは、NATM(New Austrian Tunnelling Method / 新オーストリアトンネル工法)に対応し、地山の自立性を活かしながら支保工と吹付けを効率よく行います。
刻々と変化する地質条件の中でも柔軟に対応し、早期安定化を支える確かな施工力を発揮します。
ヘラクレスは、エレクタ機能(支保工建込)とショットクリート機能(吹付け)を一体化した機械です。
従来は別々の機械で行っていた二つの工程を連続的に実施できるため、機械の入替えや人の移動を大幅に減らしました。
その結果、作業時間を短縮し、現場の省人化と安全性の両立を実現します。

山岳トンネル特有の狭い断面や不安定な地形でも、安定した姿勢で施工を続けられる設計です。
オペレーターの安全を確保しながら、支保工と吹付けの連携を高精度に行うことで、施工品質の安定化にも貢献しています。

ヘラクレスの開発は今も進化を続けています。
省人化の先を見据え、吹付け作業や建込み作業の自動化を開発を進行中です。
熟練オペレーターの技術をデータ化・制御化することで、作業の均一化とさらなる安全性向上を目指しています。
さらに、吹付けに欠かせない急結剤も進化しています。
従来の粉体に加えて液体急結剤を導入し、粉塵を抑えながら混合精度を向上。
作業環境をより安全で快適に保ち、施工品質の安定にも寄与しています。
ヘラクレスの開発は、現場のひと言から始まりました。
「トンネルの中で、支保工建込機と吹付け機をいちいち入れ替えるのは大変だ。」
この声に応えるため、開発のメンバーは“二つの力を一つにする”という挑戦をスタートしました。
そして誕生した第一号機は、ギリシャ神話の英雄の名を冠して「ヘラクレス」と名付けられました。
神話のヘラクレスは、人々のために数々の試練を乗り越えました。
現代のヘラクレスもまた、山岳トンネル工事という新たな試練に挑みながら、未来のインフラを支えています。
力と知恵、そして進化する技術。
「ヘラクレス」はこれからも日本中、さらには世界へ飛び出し、人の未来を築くために挑み続けます。