探傷器とは、構造物や部品の内部にある欠陥(割れ・空洞・異物など)を、壊すことなく検出するための「非破壊検査機器」です。英語では「Flaw Detector(欠陥検出器)」と呼ばれ、鉄鋼業、自動車、造船、航空、インフラ保守など多岐にわたる業界で使用されています。
外見では見えない部分に致命的な欠陥が存在する可能性があるため、製品の安全性や信頼性を担保するうえで探傷器の導入は欠かせません。特に近年では製品トレーサビリティや品質保証体制の強化が求められる中、探傷器は品質管理部門にとって極めて重要な役割を果たします。
製造過程では、材料の溶接部・鋳造部・接合部などにおいて、肉眼では見つからない微細なキズが生じることがあります。これらは時間経過や応力の繰り返しで亀裂に成長し、最悪の場合、構造物の破壊や製品の重大事故を引き起こすリスクもあります。
例えば以下のようなケースでは、探傷器による検査が必要不可欠です。
これらの現場では、「壊さずに確実に欠陥を検出する」ことが求められるため、探傷器の精度と信頼性が非常に重要です。
超音波探傷法(Ultrasonic Testing)は、探傷器の中でも最も広く用いられている方式です。原理はシンプルで、材料に高周波の超音波を送信し、その反射波や透過波を分析して内部欠陥を検出します。
超音波は異なる物性の境界で反射します。よって、健全な部分では裏面からの反射のみが得られますが、内部に空洞や割れがあると、そこでも反射が起こります。この反射エコーを波形表示し、欠陥の位置や深さを解析します。
■ 特徴
従来型の超音波探傷器(UT)は、1つの探触子から直進または固定角度で音波を出し、返ってきたエコーをAスキャンという波形で確認します。シンプルな構造で使いやすい反面、検査範囲が狭く角度を変えてのスキャンはプローブの物理的な動きに頼る必要があります。
一方で、フェーズドアレイ超音波探傷器(PAUT)は複数の振動子(アレイ素子)を内蔵した探触子を用いて、電子的に音波の角度や焦点を自在に制御できます。このため、プローブを動かさずに多方向からのスキャンが可能で、欠陥の形状や位置をリアルタイムで画像化(Sスキャン、Cスキャンなど)することができます。
また、PAUTでは超音波ビームをスイープさせて広範囲を高密度に検査できるため、複雑な形状の部品や溶接部でも安定した検査が行えます。従来型との大きな違いはここにあり、検査精度の高さと再現性、データの視認性の高さがPAUTの強みです。
項目 | 従来型超音波探傷器(UT) | フェーズドアレイ(PAUT) |
---|---|---|
ビーム制御 | 固定方向のみ | 多方向・可変 |
対象範囲 | 限定的 | 広範囲・複雑形状にも対応 |
表示方法 | 波形表示(Aスキャン) | イメージ表示(S/Cスキャン) |
精度 | 中~高 | 非常に高い |
操作性 | 手動・熟練が必要 | 自動解析サポートあり |
価格 | 比較的安価 | 高価だが多機能 |
放射線透過試験法は、X線やγ線などの放射線を試験対象に照射し、透過した線の強さをフィルムやデジタルセンサで読み取ることで内部の欠陥や構造を可視化する検査手法です。
■ 特徴
磁粉探傷法は、磁性体に磁場をかけ、表面近くに存在するキズによって生じる漏洩磁束を磁粉で可視化する方法です。主に鉄鋼材料の溶接部や表面仕上げ後の部品に使われます。
■ 特徴
浸透探傷は、キズに染み込む特性を持つ蛍光液または赤色液を使用し、表面開口欠陥を検出する方法です。表面に開口している微細な割れやピンホールの検出に適しています。
■ 特徴
電導体に交番磁界を当てると、表層に渦電流が流れます。この渦電流は材料内部の欠陥によって変化します。その変化を測定することで、欠陥を検出します。
■ 特徴
導入時に注意するポイントは、用途や対象物に応じた適正な方式・性能の機器を選定することです。
検査対象の材質が磁性体か非磁性体か、厚みがあるかどうか、表面か内部か、という点は非常に重要です。
欠陥位置 | 適した探傷方式 |
---|---|
表面開口 | 浸透探傷(PT) |
表面近傍 | 磁粉探傷(MT) / 渦電流探傷(ET) |
内部全域 | 超音波探傷(UT) / フェーズドアレイ(PAUT) / 放射線透過探傷(RT) |
検査の現場では持ち運びしやすい軽量モデルや、防塵防水性能を持つ筐体、直感的なタッチパネル操作が求められます。
近年では検査データの保存・転送・レポート出力が必須となっています。USB保存、クラウド対応、解析ソフト連携などが重要な機能です。
SyncScan 3は、PAUT(フェーズドアレイ超音波探傷)のハイエンドモデルとして、多角度・高精度の欠陥検出を実現する探傷器です。
主な特長:
Smartor UTは、操作性とコストパフォーマンスを両立させた、スタンダードなUT(超音波探傷器)です。
主な特長:
高精度な自動超音波探傷を実現する装置で、主にパイプ・鋼材・鍛造品などの表面および内部欠陥を効率的に検出するために設計されています。
主な特長:
FTS-eddy1は、製造現場における品質管理の高度化と不良品の流出防止に貢献する、実用性の高い一台です。※エフティーエスの自社開発製品です
主な特長:
探傷器とは、製品や構造物の内部に潜む欠陥を非破壊で検出する検査機器です。超音波・磁粉・浸透・渦電流など多様な方式があり、用途に応じた適切な選定が求められます。今回ご紹介したメーカー製品を活用することで、検査精度と作業効率を両立できます。
安全性・品質保証の強化を目指すなら、導入を検討してみてはいかがでしょうか?
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