エフティーエスでは様々な非破壊試験機を取り扱っています。非破壊試験機と一口に言っても、試験体や測定方法・測定原理は多岐にわたります。
多くの試験機を取り扱っているエフティーエスが、今回は産業用計測・管理機器の中から、膜厚計についてわかりやすく解説します!
膜厚計とは、製品の表面に施される、塗装やメッキなどのコーティングの厚さ(膜厚)を測定する機器です。
塗装は、主に素地の保護と美観を目的に施されますが、コーティングの厚さが不適切な場合、素地の露出によるサビやひび割れを引き起こしてしまう恐れがあります。
そのためコーティングの工程においては、膜厚計を用いて適切な厚さで施されているかを確認することが重要です。
膜厚を非接触で測定する方法とは?
光熱放射式、反射率分光方式、蛍光X線式、赤外線式…といった膜厚表面に触れずにその厚みを測定する方法があります。光の性質により、それぞれメリット・デメリットがあるため、特長を考えて選ぶことが重要になってきます。
光熱放射法(ATO)では、照射される赤外線分を含む光パルス(可視光/キセノン光フラッシュ)によって、試料のコーティング層(表面)は、励起現象による熱(赤外線の発生)を帯びます。その時に発生した輻射熱を赤外線センサーで捉えます。
コーティング層の固有の物性により周波数が異なるため、照射から輻射までの時間(Δt)の計測および演算処理をして膜厚値(μm)を導き出します。コーティング層が薄いほど照射から輻射までの時間は短く、厚いほど時間は長くなります。
特定の素材や材料に左右されず、紛体・液体も問わず測定が可能です。
エフティーエスの製品では、光熱放射式膜厚計であるコートマスターFLEXを取り扱っています。
基板上に薄膜が張られている試験体に光を当てると、膜の表面で反射する光と膜の内部で屈折して基盤表面で反射する光とに分かれます。この反射した光が重なって干渉し、光の位相関係により明るさが加算されたり、打ち消しあって暗くなったりします。
光源からの光を偏波保持ファイバから発し、試験体表面で反射した光を再度受光します。分光器で光の干渉(波長)を解析することにより、膜厚値として換算し測定する方法です。
物質にX線を照射すると、その物質中に含まれる元素固有の波長の二次X線が放出されます。この放出された波長を蛍光X線といいます。
物質から放出される蛍光X線の量は、物質の中に含まれる元素の量に依存するため、素地に被膜が施された試験体では被膜の厚さによって蛍光X線の量が変わります。
既に皮膜の厚さが明らかになっている試料と比較測定することにより、被膜の厚さを正確に求めることができます。
測定対象に赤外線を照射して、透過光(または反射光)によって得られるスペクトルをもとに膜厚を測定します。
コーティングに赤外線を照射すると、コーティングの素材と厚さに応じた特定波長の赤外線吸収現象が生じます。コーティングに用いられる素材の「吸収率と膜厚との関係」をもとに、測定対象の膜厚を算出できます。
リアルタイムに測定結果が求められる現場では、膜厚の測定に直接関係しない要因(光源の変動、測定対象の色の濁りなど)の影響を少なくするために3波長方式が多く採用されています。
一般的に、コーティングは非常に不規則な表面を持っており、硬化前の粉体塗装の表面はさらに粗くなります。この粗さの特性は、前処理,基板の種類と粗さ,コーティングの種類などのさまざまな要因の影響を受けます。
接触式膜厚計では、表面高さが異なるコーティングの測定箇所を多くし、平均値を求めて測定することになります。
電磁膜厚計(電磁誘導式)は、1次コイルで発生させた磁束が2次コイルに誘導されるまでの間の電流の変化から膜厚を測定します。
素地は鉄などの磁性体であり、被膜は樹脂やアルミなどの非磁性体である必要があります。
測定対象にプローブ(測定端子)を接触させ、磁石が持つ「引っ張る力」の強さで磁束密度が変化し、電磁石を流れる電流量の変化から膜厚を測定します。
2次コイルが磁束を受ける際に、範囲内に磁気を帯びる材質(鉄などの磁性体)があると磁束分布に変化