

トンネル工事では、掘った直後に壁を支える「吹付けコンクリート」が欠かせません。
その速さと強さを支えるのが「急結剤」という材料です。
従来主流だった粉体タイプには、粉塵や施工効率などの課題がありました。
そこで新しい選択肢として登場したのが
「完全アルカリフリー液体急結剤」。
安定した計量・添加が可能で、作業環境の改善やリバウンド低減による経済性の向上など、多方面でメリットを発揮します。
さらに強度発現促進剤の併用により、従来課題とされてきた初期強度不足も克服しつつあり、いまや完全アルカリフリー液体急結剤は粉体に代わる新たなスタンダードとして、各地の施工現場に浸透しつつあります。
トンネルや地下工事における吹付けコンクリートは、安全な再入坑のため、数十分〜数時間以内に十分な初期強度を確保する必要があります。

従来は粉体急結剤が広く使われてきましたが、計量精度のばらつきや添加ムラ、さらには粉塵による作業環境への悪影響が問題視されてきました。
経済性の面でもリバウンド率が高く、施工効率を下げる要因となっていました。



こうした課題に対し、環境性・経済性に優れた「完全アルカリフリー液体急結剤」が登場し、いまや国内外でスタンダードとして定着しつつあります。

液体急結剤は、完全アルカリフリーのセット(凝結)アクセレーターです。
急結成分をノズル先端で吹付けコンクリートに直接噴射添加し、セメント粒子の凝結反応を急速に促進します。
ノズル添加方式との相性が良く、吹き付けた瞬間から壁面への付着と凝結が進行します。
さらに、コンクリート練り混ぜ時に「強度発現促進剤」(HCA+)を併用することで、30分〜1時間後に必要とされる0.5〜1.0MPa程度の初期強度を確実に確保できるようになりました。
従来液体急結剤の弱点であった「超初期強度の発現が困難」であったことが克服され、大きな改善といえます。
液体急結剤には以下のような利点があります。
液体であるためコンクリートと均一に混ざりやすく、品質のばらつきが少なくなります。
現場ごとの仕上がり差を抑えることができ、安定した施工が可能です。
粉体のようにダマが生じず、計量もポンプで高精度に行えます。
そのため作業時間の短縮につながり、施工全体の効率が改善します。
完全アルカリフリーのため、作業員の皮膚刺激や呼吸器系への負担を軽減できます。
袋詰め粉体の投入作業が不要になることで、現場の労働環境も改善します。
リバウンド率を従来比で20〜30%程度低減でき、材料ロスを抑えられます。
施工サイクルタイムが向上し、全体工期の短縮にもつながります。
当社の完全アルカリフリー急結剤液体急結剤システムは、次のような条件下でも効果を発揮します。
切羽崩壊のリスクが高いトンネルでは、吹付けコンクリートがすぐに固まることが重要です。
液体急結剤は即効性に優れており、湧水条件下でも短時間で安定した覆工を形成できます。
低温下でも安定した凝結性能を発揮し、従来の粉体急結剤に比べても遜色なく安定して再入坑時間を短縮可能です。

液体急結剤には依然としていくつかの課題があります。
過剰添加は水セメント比に影響し、長期強度低下を引き起こすリスクがあるため、配合設計と添加量管理が重要です。
また、現在一般的に使用されるベースコンクリートは「高強度仕様」(セメント添加量450kg/m³)ですが、今後は環境負荷やコスト削減の観点から、400kg/m³以下への低減を目指した設計が検討されています。
欧州では先行して研究がすすんでいる石炭灰(フライアッシュ)や高炉スラグをベースとした非石灰系の低カーボンセメントとの混合配合も、吹付けコンクリートの世界でも環境保護の観点から進んでいくものと考えております。
各メーカーも、アルカリフリーを前提とした高性能型や、より環境調和型の急結剤開発に取り組んでおり、将来的には「初期強度発現」と「セメント削減」の両立が期待されます。

アルカリフリー液体急結剤は、粉体から進化した次世代型材料として、施工現場における「スピード・安全・環境対応」を同時に実現しています。
初期強度確保やリバウンド低減といった実務的なメリットに加え、環境負荷低減や持続可能な施工技術のカギを握る存在として、今後さらに重要性を増していくでしょう。

国内での液体急結剤施工実績は、現在4現場7切羽を終了させております。
時には、コンクリート性状が何らかの事情で安定せず、うまく付着しないなどの問題も発生することもありました。しかしながら、現場と一体になって解決策を模索することで、無事トンネル貫通を迎えることができるようになりました。
これからも、「現場とともに前進していく」という初志を忘れずに、液体急結剤の国内普及に尽力していきたいと思います。
新たな現場のどこかで、皆様にお会いできることを楽しみにしております!
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